
こんにちは、Lena Nadir Blog 管理人です。
AIエージェントの実装フレームワークは、ここ1〜2年で一気に選択肢が増えました。LangChain・Microsoft・AWS・Googleがそれぞれ独自の戦略でエージェント開発環境を整備しており、「どれを選べばいいのか」が分かりにくくなっています。
かくいう私は、LangChain & LangGraphからAI-Agentのフレームワークを学び始め、Azure OpenAI Studio → Microsoft Foundryへ移行し始めた頃、Microsoft Foundryにメイン使いするようになりました。Foundry PortalのPlay Groundで実験的にプロトタイプ開発するのが楽だったことに加え、仕事の環境がガチガチにMSサービスで囲い込まれているので😂、わざわざ他フレームワークを使う必要性がなくなった、という理由が一番大きいです。
この記事では、主要な4つのフレームワークを、提供主体・ライセンス、得意領域、状態管理・制御方式、相性の良いLLMという観点で整理します。特定のフレームワークを推す内容ではなく、選定時の判断材料としてご参考になれば幸いです。
まずは下図の全体像として、各社・各フレームワークが時系列でどのように進化してきたかをまとめた系譜図をご覧ください。上段は「AgentのFramework/SDK層」、下段はそれを実装する「Platform/Runtime層」の2段構成です。2022年末〜2023年がエージェントフレームワークの黎明期であり、約3年の歳月をかけて本格的なAIエージェント基盤としてのプラットフォームへ進化を成し遂げました。

各社のフレームワークが時系列でどう進化してきたかを示した系譜図。上段はコードで書くFramework/SDK層、下段は本番運用を担うPlatform/Runtime層。矢印は「同一製品が発展・改称した」関係のみを示しており、無関係な別レイヤー同士(Bedrock AgentsとAmazon Bedrock AgentCoreなど)は矢印なしで独立して配置。
主要AIエージェントフレームワーク・プラットフォームの比較
次いで、主要なAIエージェントフレームワークとプラットフォームを下表2つで比較します。LangChainとMicrosoft Agent Frameworkは筆者自身の実体験を踏まえた内容ですが、残りは文献等をもとにまとめた情報であることにご留意ください。
興味深い点として、各社とも、この2層構造を採用している点は共通しています。例えば、Microsoftは、コードで書く「Microsoft Agent Framework」と、それをホスティングする「Microsoft Foundry Agent Service」を別々に提供しています。AWSも同様に、コードを書く「Strands Agents」と、ランタイム・メモリ等を提供する「Amazon Bedrock AgentCore」は別レイヤーです。
この構造は、コンテナ技術の「イメージ」と「ランタイム」の関係に近いと感じています。フレームワーク層は、AutoGen/Semantic Kernel→Microsoft Agent Framework、Assistants API/Swarm→Agents SDK+Responses APIのように、急速な技術進歩により今後も数年単位で塗り替えられていくと予測されます。Platform層(スケーリング、Identity、Observabilityなど、企業が実際に依存する部分)を切り離しておくことで、フレームワークの陳腐化リスクから守る役割を担っています。
一方で、ビジネス上の合理性も透けて見えます。Framework/SDK層は各社ともOSSとして公開され、開発者を集める無料のレイヤーです。対してPlatform/Runtime層こそが実際の収益源であり(ユーザー側から見れば、継続的なインフラコストとして発生する部分)、Identity統合やコンプライアンス、既存クラウド契約との紐付けなど、一度組み込むと抜けにくい領域です。フレームワークの自由度を持たせながらも、プラットフォーム層で囲い込む戦略と読めます。
独立した4社が申し合わせもなく同じ構造に収斂しているのは、この技術的合理性と戦略的合理性が両輪になっているからかもしれません。
Agent開発フレームワーク層
| フレームワーク | 主な提供主体・ライセンス | 主な特徴・得意領域 | 状態管理・制御方式 |
|---|---|---|---|
| LangChain / LangGraph | LangChain Inc. / MIT | LangChainはLLM・モデル・ツール・データソース等を扱うための高レベルなAgent framework。LangGraphはLangChainとは独立して利用できる低レベルのAgent orchestration/runtimeで、長時間実行、永続化、Human-in-the-Loop、ストリーミングなどを重視。特定のクラウドやLLMに依存しない構成を取りやすい | State + Graph。Stateをノード間で受け渡すグラフ構造を採用。Checkpointerによる状態の永続化に対応し、途中からの再開や過去状態へのアクセスが可能。InterruptによるHuman-in-the-Loopにも対応 |
| Microsoft Agent Framework | Microsoft / MIT | AutoGenのAgent / Multi-Agent abstractionと、Semantic Kernelのsession-based state management、type safety、filters、telemetry等を統合したOSSフレームワーク。Microsoft Foundryだけでなく、Azure OpenAI、OpenAI、Anthropic、Ollamaなど複数のモデル/プロバイダーを扱える | Agent + Workflow。Session-based state managementに加え、Sequential、Concurrent、Handoff、Group Chat、MagenticなどのWorkflow orchestrationを提供。Workflowのcheckpointingによる長時間処理の中断・再開にも対応 |
| Strands Agents | Amazon Web Services / Apache 2.0 | モデル駆動型の軽量OSS SDK。Agent loop、モデル呼び出し、ツール呼び出しをシンプルに抽象化し、複数のモデルプロバイダーやMCPを利用可能。PythonとTypeScriptに対応し、Amazon Bedrock以外のモデルプロバイダーも扱える(筆者は未検証) | Agent Loop + State / Session / Memory。Agent stateやSession persistenceをフレームワーク側で提供。MemoryManagerによるセッションをまたいだ長期記憶にも対応し、外部Memoryサービスとの組み合わせも可能 |
| Agent Development Kit(ADK) | Google / Apache 2.0 | オープンなAgent開発フレームワーク。Gemini / Google Cloudとの統合を備えつつ、複数のモデルプロバイダーや外部ツールを扱える。Python、TypeScript、Go、Java、Kotlinに対応。Agent開発だけでなく、評価・デバッグ・デプロイまでをカバー(筆者は未検証) | Agent + Workflow。Session / State / Memoryを分離して管理。Workflow Agentsによって予測可能なSequential / Parallel / Loop等の処理フローを構築でき、LLM Agentによる動的なルーティングやマルチAgent構成も組み合わせられる |
Agentプラットフォーム層 (本番運用のためのマネージド基盤)
| プラットフォーム | 提供主体 | 役割 | 対応フレームワーク |
|---|---|---|---|
| LangSmith Deployment | LangChain Inc. | Agent向けのマネージド実行基盤。Durable execution、Streaming、Horizontal scaling、Persistence、Human-in-the-Loop、Observabilityなどを提供。LangSmithのEvaluation / Observability機能とも統合され、CloudだけでなくSelf-hosted / Standalone Serverの構成も選択可能 | LangGraph / LangChainとの統合が特に深いが、Framework-agnostic。Functional API等を介してStrands、CrewAI、AutoGen、Google ADKなどにも対応 |
| Microsoft Foundry Agent Service | Microsoft | AI Agentのホスティング、スケーリング、Identity、Security、Observability、Session management等を提供するマネージドプラットフォーム。Prompt AgentとコードベースのHosted Agentの両方に対応 | Microsoft Agent Framework、LangGraph、OpenAI Agents SDK、Anthropic Agent SDK、GitHub Copilot SDK等に対応。独自コードによるHosted Agentもデプロイ可能 |
| Amazon Bedrock AgentCore | Amazon Web Services | Runtime、Identity、Memory、Gateway、Browser、Code Interpreter、Observabilityなどをサービス単位で提供する、フレームワーク/モデル非依存のAgent運用基盤(筆者は未検証) | Strands Agents、LangGraph、CrewAI、LlamaIndex、Google ADK、OpenAI Agents SDK等に対応。Runtimeは特に広範なフレームワークに対応する一方、各サービスで対応範囲は異なる |
| Vertex AI Agent Engine | Agentのデプロイ・実行、スケーリング、Session管理、Observability、IAM等を提供するマネージドランタイム。Google CloudのAgent開発・運用基盤と統合(筆者は未検証) | ADK、LangChain、LangGraphとFull integration。AG2 / LlamaIndexはVertex AI SDK integration、CrewAI等はCustom templateによるデプロイに対応 |
各社・コミュニティの方向性と強み、LLMとの親和性
ここからは、各社・コミュニティの方向性や強み、そしてLLMとの親和性を具体的に見ていきます。最終的な選定は、普段お使いのクラウド環境を軸にしつつ、マルチクラウド化した場合の費用対効果や運用負荷まで含めて、総合的に判断していただくのがよいと思います。
LangChain: Agent開発からAgent Engineering Platformへ
- 方向性: LangChainによるモデル・ツール・データソースとの連携に加え、状態fulなAgent orchestrationを担うLangGraphと、Observability・Evaluation・Deploymentを担うLangSmithを組み合わせ、Agentの開発から本番運用までをカバーするプラットフォームへと拡張しています。2025年10月には、従来の「LangGraph Platform」が「LangSmith Deployment」に改称されました。LangGraph自体はOSSのAgent orchestration frameworkとして独立して利用できます。
- 強み: 外部モデル・ツール・データソースとの豊富な連携に加え、Human-in-the-Loop、永続化、長時間実行、過去の状態へのアクセスなど、複雑なAgentワークフローを開発・デバッグ・運用するための機能が充実している点。LangSmith Deployment自体も現在はframework-agnosticであり、LangGraph以外のAgent frameworkにも対応しています。
Microsoft: Microsoft Foundryとの統合によるエンタープライズAgent基盤
- 方向性: エンタープライズ向けAgent開発で実績のあるSemantic Kernelと、マルチAgentシステムに強いAutoGenの流れを統合し、Microsoft Agent Frameworkへ集約しています。Microsoft Foundryでは、Agent FrameworkをコードベースのHosted Agent/マルチAgent開発における推奨フレームワークとして位置づけつつ、LangGraph、OpenAI Agents SDK、Anthropic Agent SDKなど他のフレームワークも受け入れる構成になっています。
- 強み: Microsoft Foundryが提供するSearch、Web Search、Code Interpreter、Memory、MCP等のツール群に加え、Microsoft Entra ID、RBAC、ネットワーク分離、Observabilityなどのエンタープライズ向け基盤と統合しやすい点。特に既存のAzure / Microsoft環境にAgentを組み込む場合に強みを発揮します。
AWS: フレームワーク非依存のAgentエコシステム
- 方向性: AWSでは、従来のマネージドAgentサービスである「Amazon Bedrock Agents」に加え、コードでAgentロジックを構築するOSSフレームワーク「Strands Agents」と、Runtime・Memory・Identity・Gateway・Observability等を提供する「Amazon Bedrock AgentCore」という複数の選択肢が存在します。特にAgentCoreはフレームワーク/モデル非依存の設計で、Strands AgentsだけでなくLangGraph、CrewAI、LlamaIndex、Google ADK、OpenAI Agents SDKなどからも利用できます。
- 強み: IAMによる権限管理、AWS上のネットワーク・セキュリティ基盤、各種AWSサービスとの統合をAgentの本番運用に組み込みやすい点。また、AgentCoreによって、既存のAgent frameworkやモデルを大きく変更せずにAWSのマネージドな運用基盤を利用できる点も特徴です。
Google: オープンなAgent開発とGoogle Cloud統合の両立
- 方向性: GoogleはApache 2.0のOSSであるAgent Development Kit(ADK)を中心に、複数の言語・モデル・Agent構成に対応するAgent開発環境を提供しています。一方で、GeminiやGoogle Cloudの各種サービスとの統合も深く、オープンなAgent frameworkとGoogle Cloudのマネージド基盤を組み合わせられる構成になっています。
- 強み: LLMによる動的なAgent実行だけでなく、Sequential / Parallel / LoopなどのWorkflowを組み合わせて、予測可能な処理フローを構築できる点。また、A2Aなどのプロトコルを利用したAgent間連携にも対応し、マルチAgentシステムを構築できます。
プラットフォームとLLMの親和性
| プラットフォーム | モデルとの関係 | 自社モデルとの統合性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| LangSmith Deployment | モデル非依存 | 特定ベンダーへの依存を避けた設計 | LangGraph / LangChainを中心に、複数のAgent frameworkと組み合わせて利用可能。LLMそのものよりも、Agent orchestration・Deployment・Observabilityに重点を置く |
| Microsoft Foundry Agent Service | マルチLLM | Microsoft Foundryのモデルカタログとの統合が強い | GPT系だけでなくLlama、DeepSeek、Claude等を含む多数のモデルを扱える。Microsoft Entra IDやFoundryのツール群との統合も特徴 |
| Amazon Bedrock AgentCore | モデル非依存 | Amazon Bedrockとの統合が強い | Bedrock上のモデルに加え、OpenAI、Gemini、Claude等の外部モデルも利用可能。AgentCore Runtimeはフレームワーク/モデル非依存を明確に打ち出している |
| Vertex AI Agent Engine | マルチLLM | Gemini / Google Cloudとの統合が強い | Geminiを中心としつつ、複数のAgent frameworkやモデルを扱える。Google CloudのIAM、Observability、Agent運用基盤との統合が特徴 |
※ 「どのLLMが最も相性が良いか」は、モデルの性能、コスト、ツール利用能力、コンテキスト長などによって変わるため、本表では特定モデルを「最適」とは位置づけていません。各プラットフォームは自社モデルとの統合を強くしつつ、他社モデルも利用できる方向に進んでいます。
まとめ: 選定の切り口
- 複雑なAgentワークフローの状態管理、Human-in-the-Loop、デバッグ/Evaluationを重視する場合: LangGraph / LangSmithの組み合わせが有力な候補
- 既存のAzure / Microsoft環境やエンタープライズ向けのIdentity・Security・Governanceを重視する場合: Microsoft Agent Framework / Microsoft Foundryが有力な候補
- AWSのIAM・ネットワーク・監視基盤を活用しつつ、Agent frameworkやLLMの選択肢を広く残したい場合: Strands Agents / Amazon Bedrock AgentCoreが有力な候補
- Google Cloud / Geminiとの統合も活用したい場合: Google ADK / Vertex AI Agent Engineが有力な候補
ただし、現在の主要プラットフォームはいずれも「自社フレームワーク専用」から「マルチフレームワーク・マルチモデル対応」へと進んでいます。そのため、選定にあたっては「どのフレームワークを使えるか」だけでなく、自社の既存クラウド基盤、Identity / Security、Observability、Evaluation、データ基盤、モデル選択の自由度をどこまで重視するか を見ることが重要です。
また、AI Agent関連のフレームワーク/プラットフォームは更新速度が非常に速いため、本稿の内容は2026年8月時点の情報に基づくものです。実際に導入を検討する際は、各社の最新ドキュメントやリリース情報もあわせて確認してください。
全体としての感想
今回の比較で特に興味深かったのは、4社が単純に「Agentフレームワークの機能」で競争しているわけではない、という点です。
各社とも、
- Agentのロジックを実装する開発フレームワーク層
- Agentを本番環境で実行・監視・管理するプラットフォーム層
という2つのレイヤーを持ち、それぞれを組み合わせたエコシステムを構築しています。
そして現在は、「自社フレームワーク vs. オープンなフレームワーク」という構図から、マルチフレームワーク・マルチモデル対応を前提とした競争へ移りつつあるように見えます。
その一方で、
- LangGraph ↔ LangSmith
- Microsoft Agent Framework ↔ Microsoft Foundry
- Strands Agents ↔ AgentCore
- Google ADK ↔ Vertex AI
というように、自社フレームワークとプラットフォームの統合は依然として強く残っています。
そのため、Agent基盤を選定する際には、フレームワーク単体の機能だけでなく、既存のクラウド基盤、Security / Identity、Observability、LLMの選択肢、将来的な移行のしやすさまで含めて判断することが重要だと思います。
AI Agentの競争は、LLMやフレームワーク単体の競争から、Agentを継続的に開発・評価・運用するためのエコシステムの競争へ広がっているのではないでしょうか。
参考
公式ドキュメント
Microsoft
- Microsoft Agent Framework Overview (Microsoft Learn)
- Microsoft Foundry Agent Service — 概要 (Microsoft Learn) — Agent Serviceのマネージド基盤としての役割、Hosted Agents、対応フレームワーク、Identity / Security / Observability等を確認できます。
AWS(Strands Agents / AgentCore)
- Strands Agents — Session Management — Strands自身がAgent state、conversation history、multi-agent stateなどを永続化できることを確認できます。今回の記事の「状態管理をAgentCoreに委譲」という記述の裏付けにもなります。
- Strands Agents — Memory — Session managementとLong-term memoryの違い、MemoryManagerによるセッションをまたいだ記憶を確認できます。
- Amazon Bedrock AgentCore — Developer Guide — AgentCoreの全体像、Runtime、Memory、Identity、Gateway、Observability、framework / foundation model非依存という位置づけを確認できます。
- Amazon Bedrock AgentCore — Supported interfaces / frameworks — AgentCore SDK / CLIのほか、Strands AgentsやLangGraphなど複数フレームワークとの利用方法を確認できます。
- Amazon Bedrock Agents vs AgentCore + Strands (Cipher Projects)
Google(ADK / Vertex AI Agent Engine)
- Agent Development Kit — Technical Overview — ADKの基本概念、LlmAgent、Sequential / Parallel / LoopなどのWorkflow Agents、Tools、Callbacksなどを確認できます。
- Agent Development Kit — Get Started — Python / TypeScript / Go / Java / Kotlinの各クイックスタートが掲載されており、対応言語を確認する資料としても利用できます。
- Vertex AI Agent Engine — Overview — Agent Engineの本番デプロイ・管理・スケーリング、ADK / LangChain / LangGraph等の対応レベルを確認できます。特に「Full integration / Vertex AI SDK integration / Custom template」の違いが明確です。